花ぷら

花ぷら14(2014/1)

ざっと年一回ペースの「花ぷら(hanaPura)」。2013年の春にも渡布はしているのですが、そのときは知人のご家族を案内するような恰好だったこともあり、レポートを書き起こせるようなメモもあまりとれず、「えぇい、いっそのこと案内に徹してしまおう」と、花ぷらを記述することはあきらめたのでした。

今回は、86歳の母を連れてのハワイ旅です。
「母を連れて」というと、この花ぷらをお読みいただいている方は、2008 年春の「花ぷら10.5」を思い出されるかもしれません 。じつはその時の母は私の伯母であり、つまりは実母の実姉でした。わけがあってその伯母さんの養子となった私は、戸籍上の養母と生みの親である実母の二人がいる状況となり、ここ数年二人の介護をしながら生活をしてきたということなのです。
養母は昨2013年の1月に亡くなり、いまは苗字が異なる実母と暮らしている状況です。ところが実母がこれまた昨2013年の春、救急車で病院に担ぎ込まれ、その日のうちに大腸を半分切除するという手術をしました。手術中に「親族の方を集めてください」と医師から言われるような切迫した状況でしたが、集中治療室での無意識の期間や、数か月に及ぶ投薬治療などを経て、どうにかこうにか要介護3の状態で、今回ハワイへ旅立つことができたのです。

2014年1月24日、金曜日。
思えば6年前、私はこうして同じように、成田空港第1ターミナル南ウィングの ANA 特別カウンターから旅を始めていた。
そのときは、養母と実母を二人連れていた。大正生まれの養母はその後、認知症がひどくなり、町内会からも出て行ってほしいとまでいわれる状態だった。何か所も介護施設や病院を渡り歩き、昨2013年1月に他界した。
奇しくもそのちょうど一周忌のきょう、生みの母親とふたり、おなじく ANA の特別カウンターの前にたたずんでいる。

「特別カウンター」とはいま勝手にそう呼んでいるだけだが、要するに車いすなどの特別な介助や配慮を必要とする旅客のための、チェックインカウンターである。
しかし係員は不在で照明も消してある。広い南ウィングの片隅でもあり、なんだか寒々とした雰囲気が漂っている。掲示を見てみると、一般カウンタで受け付ける、と書いてある。
海外旅行のピーク時でもない限り、ホノルル行きが出発するこの時間帯、成田空港とはいえ閑散としたロビーとなる。

男性がひとり、チェックインカウンタの中でポツリと仕事しているので、訊いてみる。
「どうぞどうぞ」
笑顔でチェックインを手伝ってくれる。このチェックインカウンタから飛行機に乗る直前まで、母には車いすに乗ってもらう。杖をつきながら歩いて歩けないことはないのだが、たくさんは歩くことができないし、疲れてしまう。それに歩く速度が遅いので、移動がスムーズにいかない。
母は「車いすを押してもらって申し訳ない」「足手まといになって悪い」というが、車いすに乗ってくれていた方が、こちらとしては動きやすい。
チェックインカウンタの男性が、飴をたくさん母にくれる。伸縮式の杖は、機内へ持ち込めるようだ。


飛行機は全日空の NH1052 便。もはや、成田から ANA 便でホノルルへ行く時の定番といっていい便である。
今回は、成田空港を出発してホノルルへ行った後、帰りは羽田空港に戻るよう手配してある。つまり単純往復ではないのだ。これは少しでも現地滞在時間を多くするためにしたことで、成田発の便がホノルルに朝 9:30 に到着することと、羽田着の便がホノルルを夕刻 17:35 に出発することを利用したものだ。

【出発は成田、帰着は羽田】
こんないっぷう変わった航空券は通常、パッケージツアーではまずお目にかかれない。なによりも旅行代金を抑えることが至上命題のパッケージツアーでは、単純往復の航空券がフィットするからである。 ちなみに私の場合は ANA サイトの「片道・周遊の検索」から購入した(ANAサイトリニューアルのため、「複数都市」のページはこちら)。


ホノルルに到着すると、母と私はほかの乗客の降機が終わるのを待って、ようやく立ち上がる。ボーディングブリッジまで車いすが来てくれているはずだ。
伯母の時と同じように、少し背の高い黒人男性が飛行機のドアのすぐそばで、車いすを準備して待っていてくれる。彼は母の車いすを押して到着ロビーまで来たあと私に話しかけた。
「もう一人、車いすのお客さんがいますんで、ちょっとここで待っててください。」
彼は急いでまた、いま来たボーディングブリッジを飛行機の方へ戻って行った。

どうやらこの NH1052 便で到着した「車いすチーム」は3組のようである。
付き添いを含めた6名の乗客と、介助の男性二人、それにドライバーの合計9名を乗せたハンディ・バンは、ゆっくりと入国審査場へ向けて動き出した。
写真を撮ってみると、数年前に伯母を連れてきたときの光景と重なる。
それにしても、このときハンディ・バンで一緒になった別の旅行者と、帰りの羽田空港の、しかも特定方面行のバス乗り場で再会するとは、つゆほども思っていない。


飛行機を降りた乗客は通常、入国審査場のあたりまで来るとエスカレータで降りていくが、我々はエレベータで降りる。「Citizen」と表示されたブースのすぐ隣へ誘導され、母とともに入国審査を受ける。本来この通路は米国籍の旅行者用だが、状況によって他国の旅行者が誘導されることもある。
母は年齢によって指紋採取などの手続きは省略される。
こういった米国入国時の一連の手続きは、「US-VISIT(Visitor and Immigrant Status Indicator Technology)プログラム」の一環として行われるのだが、14歳未満と80歳以上は、指紋採取と顔写真撮影は省力される。
個人旅行者用出口を出たところで、車いすを押してきてくれた彼にチップを渡す。空港用の車いすはここまでだ。

さてと、この個人旅行者用出口のそばにある植え込みに腰を掛けて作戦を立てるのが、私のいつものやり方だ。といっても今回は一人旅ではないから、ある程度の段取りはしている。現地の知人が迎えに来てくれることになっているのだ。便名は連絡してあるが、おそらく駐車場に止めた車の中ででも待っているのではないだろうか。
持参したドコモのスマートフォンの電源を入れる。現地の電波をキャッチして通話可能な状態になるまで、思った以上に時間がかかる。
知人のM氏はすぐに車を回してきてくれた。母とM氏を交互に紹介したあと、車に乗せてもらって東へ向かう。

アーリーチェックインでもないので、のんびりと話そうということになり、空港からほど近い、ニミッツ・ハイウェイの脇にある気軽なレストランに入る。
ここは、ホノルル港31番バースの根元に位置し、「アンクルズ・フィッシュ・マーケット&グリル」がすぐ近くにある。
港ではあるが、磯臭さや生臭さといったものがほとんどない。ハワイらしい風が吹く屋外のパラソル付きテーブルでM氏おすすめのサンドウィッチを食べるが、耳を落とした食パンのサンドウィッチではなく、固めのコッペパンに水平に切れ目を入れて惣菜を突っ込んだもので、食うのに顎が疲れる。ハワイにドトールの「Bサンド」があったらいいのになぁ...。
のんびりとした港の風景に、係留された漁船がゆったり上下にうごいている。


今回我々は、ワイキキ・サンセットというコンドミニアムを予約している。マイクロソフトから独立したとかいう旅行予約サイト「エクスペディア」で、最適なものを検索しておさえた。
ワイキキホテル街の東端に位置しているが、隣のブロックに建つワイキキバニヤンと並んで利用しやすく、日本人にも人気がある。
空港まで迎えに来てくれたM氏に、その「サンセット」まで送ってもらう。まだ部屋に入れずともチェックインだけして、大きい荷物を預けてしまおう。

そういえば今回初めて意識したのだが、「アメニティ・フィ」または「リゾート・フィ」と呼ばれる付加料金について、フロントデスクで説明される。
まぁ要するに「強制的に付加されているもろもろのサービスは、別途有料である」と説明されるわけであって、通常の日本人の感覚なら釈然としない「強制集金システム」である。こんな理不尽な仕組みがいま、ハワイの多くのホテルで始められているのである。いかにもアメリカ人らしいやり口、といえようか。
同時に日本のビジネスホテルチェーンのシステムがなんと素晴らしいものかとも思う。

【有料アメニティーの内訳(ワイキキサンセットの場合)】

ここワイキキサンセットの場合、1日当たり18ドルがアメニティ・フィとして課金される。その内訳はざっと次のようなものだ。
部屋でのインターネット接続、コーヒーメーカー用のコーヒー1回分(美味しいとは思えなかった)、部屋に届けられるローカル新聞(もちろん英語)、セーフティボックス(暗証番号電磁ロック方式)、島内電話無料、DVD レンタル。
私の場合、インターネット接続はすでに借りているモバイル Wi-Fi ルータを使えば済むことだし、現地の新聞などほとんど読みはしない。市内電話をかけまくるなんてこともない。DVD にいたっては、1階の妙なマシンにカードを突っ込んで、「裸の」DVD を受け取るのであるが、タイトルもその数も死ぬほどショボイ。これらを利用しようがしまいが、毎日キッチリ18ドル課金されていくのである。
個人的にはセーフティボックスを5ドルぐらいで使わせてもらえれば、あとは何も要らない。次回のハワイ旅はぜひ「余計なサービス」のないところを選びたい。

6階に待機できる部屋があるというので、そこに移動してくつろいでいたが、せっかくの良い天気だし、車いすを押しながら周囲を散歩する。
ロビーを出てすぐ左に回り込むと、ジェファーソン小学校の裏に出られる。子供たちは中にいるのかどうかわからないが、校庭はひっそりとしている。
周辺の2~3ブロックをのんべんだらりと車いすを押していると、ぼつぼつ部屋に入れる 15:00 である。

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